2025年12月5日(金曜日)、ベルサール神田にて「第15回がん新薬開発合同シンポジウム+第9回医療機器開発シンポジウム」をハイブリッド形式で開催しました。本シンポジウムは、がん新薬・医療機器の開発加速に向けて、臨床・研究・産業・行政の多様なステークホルダーが一堂に会し、がん新薬開発・医療機器開発に向けた論点を共有する場です。今年は、医療機関、企業、行政それぞれの立場から見た治療開発、DDS技術・タンパク質エンジニアリング分野でのカンパニークリエーション、医療AIなど、最前線の知見と実践が集約されました。
国立がん研究センター理事長の間野博行からの開会挨拶では、ドラッグラグ・ドラッグロスの解消を最大のテーマとして掲げ、日本の創薬力向上により患者さんに最良の薬を届ける決意が述べられるとともに、本シンポジウムでは、講演から学ぶだけでなく、参加者間の連携を広げ、開発が加速する端緒となることへの期待が示されました。
国立がん研究センター 間野博行先生
第1部「がん治療開発の未来予想」の冒頭では、東病院 病院長の土井俊彦から「日本における創薬エコモデル構築にNCCHEは、どう取り組んでいくの?ドラッグラグ・ロスの解決への必要条件?十分条件?」のタイトルで、ドラッグラグ・ロスの解決に向けて東病院がどのように取り組むか、グローバル基準の信頼性・質の保証、医療Dx・DCTの導入、治験のスピード・コスト、病院の負担などの観点から講演しました。
続いて、ネクセラファーマ株式会社 Investor Relations 部長の都築伸弥氏から「株式市場から見たがん医薬品市場動向と未来予想」のタイトルで、世界市場におけるバイオ医薬の伸長、日本市場の資金規模・投資家構造の課題等について講演いただきました。
続いて、株式会社RealizeEdge Partners 代表取締役社長の志鷹義嗣氏から「製薬・バイオテック企業から見たがん治療開発の未来予想」のタイトルで、世界のがん治療開発環境の変化、がん治療の未来像等についてスタートアップスタジオの立場からご講演いただきました。
第1部の最後に、日本医療研究開発機構(AMED) 調整役の下田裕和氏から「我が国創薬環境の改善とグローバル化への挑戦」のタイトルで、事業間連携の課題と強化や政府の取り組みも含めてAMEDの創薬環境の整備についてご講演いただきました。
国立がん研究センター 土井俊彦先生
ネクセラファーマ株式会社 都築伸弥氏
株式会社RealizeEdge Partners 志鷹義嗣氏
日本医療研究開発機構 下田裕和氏
国立がん研究センター 土井俊彦先生、土原一哉先生
第2部「医薬品開発の未来予想」の冒頭では、東病院 副院長/臨床研究支援部門長/橋渡し研究推進センタースタートアップ支援チームリーダーの佐藤暁洋から、「NCC SAPでのカンパニークリエーション」のタイトルで、スタートアップ支援拠点の全体像、プロジェクトマネージャーによる伴走支援、今後の予定など事業の概要について講演しました。
続いて、先端医療開発センター 新薬開発分野長の安永正浩から「DDS創薬の最前線──抗体医薬と次世代モダリティの臨床応用」のタイトルで、次世代抗体医薬としての武装化抗体・2重特異性抗体、PROTAC・核酸・ナノ粒子・エクソソーム・細胞DDSなど多様なDDSの臨床応用について講演しました。
続いて、インペリアルカレッジロンドン バイオエンジニアリング専攻 准教授/国立がん研究センター 先端医療開発センター 特任研究員の石原純氏から「タンパク質工学の未来と創造性」のタイトルで、エンジニアリングで多様化する抗体の形、腫瘍コラーゲン結合ドメインを融合させた免疫チェックポイント阻害薬やIL-12による毒性低減/薬効増強、免疫抑制性サイトカインなど、最新の研究成果についてご講演いただきました。
第2部の最後に、株式会社慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)シニアアソシエイトの鈴木利洋氏から「投資家視点で見る:日本のDDS・タンパク質医薬品シーズにおける社会実装への課題」のタイトルで、DDS・プロテインエンジニアリングの近年の提携・M&A動向、スタートアップ創出と目指す企業像、社会実装に必要な事項と課題、特に製造に向けた対応等についてご講演いただきました。
国立がん研究センター 佐藤暁洋先生
国立がん研究センター 安永正浩先生
インペリアルカレッジロンドン 石原純氏
株式会社慶應イノベーション・イニシアティブ 鈴木利洋氏
国立がん研究センター 佐藤暁洋先生、布施望先生
第3部「MedTech開発の未来予想」では、4人の演者が、エンジニア、事業者、Funding Agency、Venture Capitalのそれぞれの立場から、AI技術を基盤とした医療領域の技術開発の未来についてご講演いただきました。
名古屋大学大学院情報学研究科 教授 森健策氏より、生成AIは医療分野で現状どのような活用のされ方をされているのかを事例を交えて解説していただきました。また、最新の米国の学会動向や、診断レポートを自動生成するシステムの事例から、既に技術的には診断の自動化は可能な状況にある中、医療従事者や患者、規制側を含む社会全体がそれを受け入れる環境の醸成が期待されることなど、お話いただきました。
続いて、東日本橋内科クリニック/Ubie株式会社の白石達也氏から、医師の働き方改革が求められる今、真に医療現場で必要とされている「診療の効率化」を実現するプラットフォーム開発と、その先に見えている未来の医療現場について、ご講演いただきました。薬機法の規制対象外だからこそできる、現場起点のスピーディーなプラットフォーム開発の実情と、それがもたらす「診療の効率化」がデータと共に示されました。
続いて、日本医療研究開発機構(AMED) 医療機器ヘルスケアプロジェクトのプログラムディレクターである佐久間一郎氏から、AMEDが現在進めている医療機器やヘルスケア製品の開発支援の方針について、ご講演いただきました。「優れた技術」「優れた臨床価値」「優れたビジネスモデル」の3つを兼ね備えた社会実装に必要な開発や、そのマインドを持った研究者育成の推進を呼びかけました。
最後に、Red Capital株式会社の井上智子氏が、投資家の視点から、AIによる効率化がもたらす医療の未来について、投資環境や社会受容性という観点からご講演いただきました。世界の医療AIのこれまでの歩みを振り返り、医療AIの価値がどこから社会に浸透していっているのか、独自の分析から現状と今後の未来予想について、期待も込めて、自身の考えを共有していただきました。
名古屋大学 森健策氏
国立がん研究センター 伊藤雅紹先生
東日本橋内科クリニック/ Ubie株式会社 白石達也氏
日本医療研究開発機構 佐久間一郎氏
Red Capital株式会社 井上智子氏
国立がん研究センター 竹下修由先生
最後に、国立がん研究センター東病院 NEXT医療機器開発センター長の矢野友規より、閉会の挨拶を行いました。第1部、第2部、第3部のそれぞれの内容を振り返り、各演者が専門的な立場から共有した知見を踏まえた、次に起こすべき行動が何なのか、次に生み出すべき価値が何なのか、シンポジウムに参加した皆が考え行動していくことが、日本が更に高いレベルで価値を提供していくために必要なことだという趣旨の言葉で、シンポジウムを締めくくりました。
今回は会場とオンラインで合計920名程の参加者があり、閉会後の会場では演者と聴衆が議論を続ける場面もあり大変活発な会となりました。長時間に渡る中、多くの方に最後までご参加ご清聴いただき感謝申しあげます。
国立がん研究センター 矢野友規先生