国立がん研究センター 東病院

第14回がん新薬開発合同シンポジウム+第8回医療機器開発シンポジウム
「NCC発、イノベーションジャンプ!開発力強化に求められるヒト、モノ、マネー、+α」をハイブリッド開催(2024年12月13日)

2024年12月13日(金曜日)、秋葉原コンベンションホールにて「第14回がん新薬開発合同シンポジウム+第8回医療機器開発シンポジウム」をハイブリッド形式で開催しました。「NCC発、イノベーションジャンプ!開発力強化に求められるヒト、モノ、マネー、+α」をテーマに、わが国のアカデミア、ベンチャーから、ゼロイチで革新的シーズを迅速に開発していく創薬・医療機器開発のエコシステムの整備ついて、産官学各方面で精力的に取り組まれている方々よりご講演いただき、活発な意見交換が行われました。
※ 当日のプログラムや抄録集、スライドはこちらをご参照ください。

東病院長の土井 俊彦による開会挨拶に始まり、冒頭の基調講演「我が国の創薬力向上に向けての課題と今後の取り組み」では、医薬品医療機器総合機構(PMDA) 理事長の藤原 康弘先生より、ドラッグロス・ラグの問題を中心に現在PMDAや政府が取り組んでいる各種施策について、各国規制当局など海外の現状を踏まえてご講演を頂きました。日本の医薬品開発に係る課題が明確になったとともに、今後産官学でどのように取り組みを進めて行くべきかの示唆が得られた講演内容でした。

  • 医薬品医療機器総合機構 藤原 康弘先生

    医薬品医療機器総合機構 藤原 康弘先生

  • 国立がん研究センター 土井 俊彦先生

    国立がん研究センター 土井 俊彦先生

続く第1部「日本の創薬力強化」では、国立がん研究センターの佐藤 暁洋より「がん医療の未来をクリエイトする大学発医療系スタートアップ支援拠点事業 国立がん研究センターの新しいチャレンジ」、シノビ・セラピューティクス株式会社 代表取締役の五ノ坪 良輔先生が「大学発ベンチャーからグローバル・バイオテックへの道程」、テリックスファーマジャパン株式会社 代表取締役の西村 伸太郎先生が「核医学診断薬・治療薬開発:豪州からの学び―和魂洋才」のタイトルで、アカデミアでのエコシステム構築、アカデミア発スタートアップの海外展開、海外での起業と事業展開など、スタートアップと国内外のエコシステムの視点で講演が行われました。今後ますます増えていくことが期待される、スタートアップ発のグローバルでの革新的医療技術の開発に対して多くの示唆が得られた講演でした。

  • 国立がん研究センター 佐藤 暁洋先生

    国立がん研究センター 佐藤 暁洋先生

  • シノビ・セラピューティクス株式会社 五ノ坪 良輔先生

    シノビ・セラピューティクス株式会社 五ノ坪 良輔先生

  • テリックスファーマジャパン株式会社 西村 伸太郎先生

    テリックスファーマジャパン株式会社 西村 伸太郎先生

  • 国立がん研究センター 土原 一哉先生、佐藤 暁洋先生

    国立がん研究センター 土原 一哉先生、佐藤 暁洋先生

続く第2部「in vivo 遺伝子治療(第14回がん新薬開発合同シンポジウム)」では、東京大学医科学研究所の岡田 尚巳先生から「再生医療・遺伝子治療の社会実装に向けた基盤技術開発」、モデルナ・ジャパン株式会社の齊藤 格先生から「新規がん免疫療法モダリティとしての個別化がんワクチンの開発と未来展望」のタイトルでご講演いただきました。岡田先生からは、がんや難治性遺伝性疾患に対する遺伝子治療の期待と課題、アデノ随伴ウイルスベクターを中心に遺伝子治療用製品のモダリティ選択と開発動向、製造・品質管理の課題と今後の展開についてご解説いただきました。齊藤先生からは、特にmRNAを応用した開発の現状と、次世代がん免疫療法の可能性について、解説と、これがどのように未来のがん治療のパラダイムシフトを引き起こすかについての展望が示されました。再生医療・遺伝子治療をより広範囲に社会実装するためには、引き続き基盤技術の開発と実用化への取り組みが重要であり、産学官の連携が鍵になると考えられました。

  • 東京大学医科学研究所 岡田 尚巳先生

    東京大学医科学研究所 岡田 尚巳先生

  • 国立がん研究センター 布施 望先生、久保木 恭利先生

    国立がん研究センター 久保木 恭利先生、布施 望先生

  • モデルナ・ジャパン株式会社 齊藤 格先生

    モデルナ・ジャパン株式会社 齊藤 格先生

  • 会場の様子

    会場の様子

第3部「MedTech エコシステム拠点のあり方(第8回医療機器開発シンポジウム)では、前半に講演が行われ、後半に登壇者も含めたパネルディスカッションが行われました。経済産業省からは医療・福祉機器産業室長の渡辺 信彦先生より、医療機器産業政策について、経済産業省の取組みをご紹介いただきました。続いて、日本医療研究開発機構(AMED)の医療機器・ヘルスケア事業部長の林 勇樹先生から優れた医療機器の創出に係る産業振興拠点強化事業におけるAMEDの取組みや採択されている拠点に対する期待をお話しいただきました。また続いて、本事業に採択されている拠点のうち、東北大学、京都大学、国立がん研究センターから本事業での各拠点の特徴ある取組みが紹介されました。東北大学からは東北大学病院臨床研究推進センター 副センター長/開発推進部門長 池田 浩治先生より、長年医療機器開発を支援してきた経験に基づき、開発者に寄り添った伴走支援の重要性とそこにこだわった支援の取組みと成果について紹介されました。京都大学からは、京都大学医学部附属病院 先端医療研究開発機構 医療開発部 部長/教授 永井 純正先生より、国内でもまだ数少ない海外に拠点を有する拠点として、海外拠点との連携の取組みや海外展開を狙うプロジェクトとそれ以外のプロジェクトの見定めに関する視点が共有されました。国立がん研究センターからは、国立がん研究センター東病院 副院長/医療機器開発支援部門長 伊藤 雅昭より、既存のスタートアップの支援として米国展開を支援しているインキュベーターとの連携による取り組みを紹介し、また、スタートアップの創出のための取組みとして拠点内でのEntrepreneur in Residenceに対するチャレンジの現状と課題が共有されました。

  • 経済産業省 渡辺 信彦先生

    経済産業省 渡辺 信彦先生

  • 日本医療研究開発機構 林 勇樹先生

    日本医療研究開発機構 林 勇樹先生

  • 京都大学医学部附属病院 永井 純正先生

    京都大学医学部附属病院 永井 純正先生

  • 国立がん研究センター 矢野 友規先生、竹下 修由先生

    国立がん研究センター 矢野 友規先生、竹下 修由先生

  • 東北大学病院臨床研究推進センター 池田 浩治先生

    東北大学病院臨床研究推進センター 池田 浩治先生

  • 国立がん研究センター 伊藤 雅昭先生

    国立がん研究センター 伊藤 雅昭先生

第3部の後半には、司会にスタンフォード大学の池野 文昭先生を加え、パネリストとして講演の演者に加えて、AMED医療機器・ヘルスケアプロジェクト プログラムディレクターの妙中 義之先生にご登壇いただき、パネルディスカッションを行いました。
パネルディスカッションでは、日本発スタートアップの米国展開に対する各パネリストの意見が共有されました。その中で、国内で進められている医療機器開発のすべてがスタートアップとして米国展開まで視野に推進するプロジェクトばかりではない事実、そして、その見極めは開発しているスタートアップだけではなく、一定の経験を有する支援機関のサポートも重要となる点が指摘されました。また、パネリストの共通の認識として、リソースの限られる現状のアカデミア支援機関においては、全てのプロジェクトに対し米国展開を検討することは現実的ではないため、支援対象を絞り注力した支援を実施することで成功事例を生み出すことの重要性について指摘がなされました。さらに、司会の池野先生から米国から見た日本のスタートアップに対する課題として、医療ニーズだけではなく、市場ニーズ(大企業がどの領域、どの疾患の治療や診断に注力しているか)についても、調査することが重要であるとの指摘がありました。最後に司会の池野先生より、米国での医療機器開発の長い歴史を米国の野球の歴史になぞらえて、米国の長い野球の歴史の中で最も活躍している選手として日本人が賞賛されているように、日本で医療機器開発スタートアップを創出し、育成したスタートアップが米国進出する活動を継続的に行っていくことの重要性を強調して、第三部を閉めました。

  • (左から)伊藤先生、妙中先生、渡辺先生、林先生

    (左から)伊藤先生、妙中先生、渡辺先生、林先生

  • (左から)永井先生、池田先生、池野先生、竹下先生

    (左から)永井先生、池田先生、池野先生、竹下先生

  • 日本医療研究開発機構/国立循環器病研究センター 妙中 義之先生

    日本医療研究開発機構/国立循環器病研究センター
    妙中 義之先生

  • スタンフォード大学 池野 文昭先生

    スタンフォード大学 池野 文昭先生

最後に国立がん研究センター東病院 副院長/NEXT医療機器開発センター長の小西 大より、閉会の挨拶を行いました。本シンポジウムで取り上げたテーマの今後に向けた期待と聴講者の各領域での今後の活躍を祈念し、本シンポジウムを閉会いたしました。
今回は会場とオンラインで895名程の参加者があり、大変活発な討議をすることができました。長時間に渡る中、多くの方にご参加ご清聴いただき感謝申しあげます。

  • 国立がん研究センター 小西 大先生

    国立がん研究センター 小西 大先生